研修病院の選び方
平素より大変お世話になります。
現在とある民間病院で血液内科後期研修医として充実した日々を送っています。
今後は週1回程度を目標に更新を続けて行きたいと考えています(本当にできるのでしょうか…)。
さて、今回は研修病院の選び方についてです。
ネットや書籍には初期研修病院について数多くの体験談が書かれております。たすき掛け(複数の研修病院を渡り歩いて研修するシステム)でもしない限り、n=1のバイアスのかかった体験談がほとんどだと思います。
今回の記事も例外ではありませんが、私なりの考えを記していきたいと思います。
結論としては、
「大学病院は選ぶな!」
この一言に尽きると思います。
もちろん大学病院によってシステムが異なりますので一概には言えません。
3点ほどその理由を述べようと思います。
1.採血・ルート業務
大学病院の研修医の朝は採血から始まります。
採血棚に置かれている採血スピッツの山。その山は時に10人分くらいにもなります。
特に血液内科では採血結果によって方針が変わることもありますので、それに間に合うようにするためには朝6時台に出勤しなければなりません。もちろん、時間外手当は出ません。
もちろん採血をすることで患者さんと意思疎通を図ることはできますが、朝回診を迎える頃にはヘトヘトになってしまいます。
一方、点滴を落とすために血管内に樹脂製の細い管を留置する(これをルート確保と呼びます)ことも研修医の仕事でした。
消化器内科をローテートしていたときは、ルート当番日が週1回程度あり、多い時で午前中に10人分入れていたこともありました。
それだけで午前が終わり、ヘトヘトになります。
月1回ケモセンターの当番日があり、その日はケモセンターに閉じこもって20~30人分のルートを挿入します。もちろんその時間は病棟業務は進みません。
看護師さんでも出来るはずの手技ですが、大学病院では”ルートナース”と呼ばれる資格を持たないと看護師でできないことになっておりました。
大学病院には大勢研修医いますし、ルートナースの資格とったところで余計な仕事が増えますし、誰も資格を取りたがらないですよね。
2.効率の悪い業務
グループ制をとっている科が多かったですが、どの科も全員で回診することが多かったです。
回診は個人個人で回ればそれで済むはずですが、上級医が外勤(外の病院でのバイトのこと)から戻ってくるのを待たなければいけないことが多々ありました。それまでは何もできません。
またカンファレンスの強制出席もありました。もちろん大事なカンファもありましたが、指導医クラスの先生方の中で完結することも多々あり、「こんな夜遅くまで自分がいる意味あるの?」と思うこともしばしば。
暇つぶしにiPadをいじっていたら音が出てしまい、怒られてしまったこともありました…。
3.人手不足
採血・ルート業務も人手不足に起因するものですが、看護師のみならず、患者の移送を行うスタッフや臨床検査技師、放射線技師、事務さんもたりません。
本来他の職種でできること(患者移送、骨髄穿刺の標本作成、手術の器械だし、書類作成、食事の変更などなど…)を医者が行っているのが現実です。
大学病院で育った上級医もそういった環境で育っているため、それが当たり前の環境と考えており、研修医が苦しんでいても「とにかく、頑張ってくれ」の一言で済まされてしまいます。
研修医は院内のヒエラルキーの底辺であり、改善しようにも自分たちの声が届くことはありません。
加えて大学病院は職種間の垣根が高いため、改善プロジェクトが始まったとしても、遅々として進みません。
研修医はどの病院でも裁量はそれほど与えられないので、よく耳にする「どんな研修環境でも自分の努力次第でどうとでもなる」という格言はあながち間違いではないと思います。ですが、上記雑務による疲労や自己学習時間の不足は、雑務の少ない病院と比べると大きな差となり得ます。
主体的でない業務をこなすこと自体楽といえば楽ですが、結構メンタルがやられます。
もちろん大学病院でしか経験し得ないものもあると思いますが、私としては市中病院をお勧めします。