後期研修2年目の振り返り

すずめです.

相変わらず怠惰なので,ブログ更新はしばらく出来ておりませんでした.

ちょうど後期研修2年目が終わったこともあり,これまでの研修の振り返りをしようと思います.

内科志望の医学生/研修医の方にとって参考になることが少しでもあれば嬉しいです.

 

これまでの研修のざっとした流れは下記の通りです.

 

後期研修1年目:

基幹病院で通年の血液内科研修+他科併科ローテート

 

後期研修2年目:

4-9月 大規模病院での血液内科研修

再発・難治例の治療や,移植症例を主治医として担当させてただきました.症例は30症例程度.6ヶ月の短い期間ではありましたが,これまで初発例しか見たことがなかったため,診療の幅が広がったと思います.

検査部が充実しているところでした.フローサイトメトリー(8-color),ウイルスDNA検査,キメリズム検査は自前で迅速に出来ます.その充実さはおそらく日本でも指折りと思います.

また,短期間での研修でしたが,ボーナスもそれなりにいただきました(基幹病院からはボーナス満額と,片道の引越し代をいただきました).

 

10-12月 小規模病院(特別連携施設)での一般内科研修

ある程度時間があったため,エコー,カテーテル検査(シャントPTA)にも入っていました.小規模病院でしたがマルクもしました.ただ,結局のところ外注に出すので,それだったら初めから検査部の充実している大規模病院に送った方が良いだろうと思いました小規模病院での診療の難しさを実感.

また,血液内科医が非常勤しかいなかったので,他科からコンサルトが時々きました.うまく応えられませんでしたが.

給料については,ボーナスはもらえませんでしたが,ボーナス込みのお給料をもらいました.

 

1-3月 小規模病院(連携施設B)での一般内科研修

内視鏡日に胃カメラをさせてもらいましたが,将来内視鏡を使う予定が全くないので,モチベーションが湧きませんでした指導医の先生からは「他の日にも内視鏡室覗いて,内視鏡触らせてもらいなさい.」と怒られてしまいましたが,それでもモチベーションが湧かず.ただ,多くを見ることで内視鏡の見方は身についた気がします.

他,脳血管疾患の患者さんを脳外科の先生と一緒に見たり,手術症例の周術期管理を行なっていました.血液内科の先生も複数いらっしゃたので,小規模病院でのケモがどのような感じかも見ることができました.

医局が同一であり,他科の先生に相談しやすい環境でした.

 

 

これに加えて,基幹病院・派遣先の大規模病院の先生から継続して論文指導を受けていました.また基幹病院の図書室が充実しており,適宜文献を送ってもらってました.論文の校正も無料でしていただきました(自分の英語がpoorすぎてご迷惑をおかけしました).

 

という感じで多くのスタッフの方にお世話になりました.

新専門医制度前の単一施設で血液内科ストレート研修していた世代と比較すると,遠回りとなった感は否めませんが,この1年を通して幅広い視点が身についたことは確かだと思います.また,単一施設ですとどうしても業務がマンネリ化するところもあるため,環境を変えることで今までのプラクティスをある程度俯瞰的に見ることができるようになった気もします.

ただ一方で,短期間の環境の変化の繰り返しで,疲れてしまったところもあります.病院によっては他院で他科ローテートするところもあり,なおさら疲れるのでは…?と思います.自分の場合はHigh volumeの病院での血液内科に特化した研修+一般内科での研修の組み合わせで,ちょうど良い研修になったと思います.

 

以上一例報告でした.

内科専門医制度f**k!と思うところもありますが,内科を目指す人が増えれば良いなと思います.

特に血液内科志望の学生・研修医の方がいましたらご連絡いただけたら嬉しいです.

 

今後ともどうぞよろしくお願いいたします.

退院サマリを早く仕上げることの大切さ その1

すずめです。

これまで書評を中心に書いてきましたが、今回は"業務の効率化"というカテゴリーで文章を書こうと思います。

その第一弾は... "退院サマリー"です。

 

退院サマリーは患者さんが退院する時に作成する書類の一つで、主訴・現病歴・既往歴・入院時現症・入院後経過・退院時処方等をまとめたものです。医師に限らず、看護師・療法士にも同様のサマリーが存在します。これは作成が義務付けられているようで、現在勤めている病院では退院後7日以内に作成しなければいけません。退院するたびに書かなければいけないものなので結構な負担を強いられます。

 

退院サマリーにまつわるこんな論文があります。

Association between days to complete inpatient discharge summaries with all-payer hospital readmissions in Maryland.

Hoyer EH, et al., J Hosp Med. 2016 Jun;11(6):393-400.

この解説は洛和会丸太町病院の先生のブログに取り上げられています。

退院サマリーを迅速に書くことは良質の医療を示す | 洛和会丸太町病院 救急総合診療科 非公式HP

 

退院サマリーの作成が遅れるほど、患者の再入院率が上昇するとした論文です。

再入院率云々な話は実感としてはまだわからないのですが、サマリー作成が早い先生方は仕事が早い印象があります。

 

 

慣れてしまえばすぐ書き終えられるけれど、慣れないうちは全然進まない退院サマリー...(ブログを継続すると言い続けてなかなか筆が進まない私が言うなと言う話ですが......)

どうすれば早く書けるのか。私もまだまだ模索中ですが、こうすればいいんじゃないかというのは最近になって少しずつわかってきました。

その点について次回記していきたいと思います。

 

 

 

書評:風をたべる -makan angin-

お久しぶりです。すずめでございます。

今回はこちらの本を紹介します。

 

風をたべる -makan angin- (宇垣美里著 集英社)

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今年3月までTBSアナウンサーとして活躍されていた宇垣美里さんによる初のフォトエッセイです。宇垣さんの生い立ちから現在に至るまでの軌跡が書かれています。

 

週間プレイボーイに連載された33のエッセイをもとに構成されているのですが、その根底には”世の中の理不尽”に対する反骨精神が流れていて、とても読み応えがありました。また宇垣さんは読書家だそうで、随所に偉人の言葉が引用されています。

 

ちなみにこの本の題名にある”makan angin”はマレー語で「旅する」を意味するのだそう。直訳すると「風を食べる」。知らない場所で感じた孤独と自由が、その気になればどこにでもいける原動力を生み出しているようです。

 

今を全力で生きる宇垣さんのエネルギッシュさに圧倒される一冊でした。

後期研修1年目を振り返って

お世話になります。すずめです。

例にもよってブログの更新を怠っておりました。

できるようになったこと、まだまだ改善が必要なことについて簡単に振り返りを行おうと思います。

 

◯できるようになったこと

1. 多くの患者さんを診ることができたこと

当院は当該地域のみならず周辺地域からも多くの患者さんがいらっしゃいます。当院血液内科は良性疾患から移植症例まで幅広く診ているため、多様な経験ができました。新専門医制度はローテート式のところもあるようですが、当院は並科ローテーション(主科+症例が不足している科を同時に回る方式)ですので、年間を通じて入院・外来含めて経験ができました。

特にリンパ腫の治療は初回導入療法こそ入院で行いますが、2コース目以降は外来に移行する時代です。化学療法を繰り返し行うことで初めて出てくる合併症もあり、その都度どう対応したらよいかわからなくなることもしばしば。そのおかげか、病状説明の際も見通しをもって説明することができるようになりました。

 

◯改善が必要なこと

1.継続学習ができていないこと

本ブログもそうですが、症例の振り返りや英語学習といった積み重ね学習ができていません。資産形成で"複利のチカラ”がよく言われていますが、積み重ね学習も数年後には複利の差に繋がってしまうような気がします。反省です。

 

2.睡眠が十分取れていないこと

1のプロブレムに関しては睡眠不足がトリガーになっている気もします。眠前のネットサーフィンは覚醒を促してしまって睡眠不足になってしまうのは頭ではわかっているんですが、ネットサーフィンに勤しんでしまいます。そのせいで日中眠くなり、プラスアルファのことができていないような気がします。来年度はなんとしてでも7時間睡眠は確保しようと思います。

 

3. 研修医への指導ができていないこと

自分のことで手いっぱいで、指導が全くと言っていいほどできませんでした。完全に放置していました。自分の勉強不足もあって上手に接することができなかった面もあると思います。反省ですね。

 

簡単に振り返るとこんな感じです。反省点も多いですが、成長できたところも少しはあると思います。医局の所属ではないですが、4月からは病院を転々としなければいけないので、その都度順応できるか不安でございますが、頑張っていきたいと思います。

書評:「定年後」

お世話になります。

書店で平積みになっていた本でつい手に取ってしまった本、その名も「定年後」。

 

定年後 - 50歳からの生き方、終わり方 (楠木新著、中公新書

https://www.amazon.co.jp/dp/4121024311/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_1EjiCbV1J4GDB

 

 

知人にその旨話すと「まだ若くないでしょ。」とつい言われてしまいますが、読み終わった今言えることは「若い時こそ手に取ってほしい!」ということです。

 

著者の楠木新さんは新卒から定年まで30数年間大手生命保険会社につとめ、すでに定年退職された方で、まさに当事者の方です。定年後にシニア社員・定年退職者・地域で活動する人たちへの取材を通して得た”真に豊かに生きるためのヒント”が本書には詰まっています。

 

60歳時に36年間勤めて来た会社を退職した著者。退職した当初は開放感で満たされていたそうですが、数週間経つと生活リズムが狂ってしまったそう。まず予定がびっしりと詰まった手帳が空白となり、曜日の感覚がなくなります。また通勤のために早起きする必要もなくなり、概日リズムも狂います。会社に通ってた際は名前で呼ばれていたものが、今となっては名前で呼んでくれるのは病院の受付だけ(家庭では名前ではなく「おとうさん」と呼ばれる)。

そんな筆者はフィールドワークを行うことに。街場のカフェやスポーツジム、図書館など観察対象は多岐にわたります。そんななかで見えて来たのは「みんな独りぼっち」ということ。仕事の役職・(会社を通じた)社会貢献・歓送迎会などの懇親会など、それまでは会社が”インフラ”として提供していたものが一切なくなってしまいます。定年退職後の”悠々自適な”生活を期待するはいいものの、待っているのは役割を与えられない生活。家庭でも”亭主元気で留守がいい”と言われ、除け者にされてしまいます。

平均寿命が80歳を越す現代においては、定年後の時間はあまりにも長い。役職も解かれ、体力も残っている。そんな定年後に大事なのは”社会との繋がり”であると著者は説きます。

本書にはそれまでの仕事とは全く関係のない分野に進出したり、ゆるい形で会社に参画したり、幼少期に熱中したことを再び始めたりする定年後の方が取り上げられています。

 

また、定年後を充実させるためには”定年前からの準備”が必要ともおっしゃいます。著者は7歳のときに体調を崩し、長期療養を余儀なくされます。いかに会社にぶらさがっていたかということを実感し、50歳から執筆活動も始めます。会社員とフリーランスの2足のわらじを履いていたのです。仕事が一区切りするのが約3年と考えると、定年前から動き出すことで、その周期を繰り返すことができ、新たな立場に立てる可能性が高くなる。また、その道を極めた後にほかの分野にも手を出すことができる。そんなメリットがあるとおっしゃいます。

 

業務が忙しく、業務時間外はできるだけ休んでいたいと思う昨今でありますが、若いうちから交友の幅や趣味を広げたりする必要性を痛感させられました。いまのうちに読んでおいてよかったと、心の底から思います。

書評:「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 第1巻」

お世話になります。

最近研修医や救急医、外科医などを焦点にしたドラマが多いように見受けられますが、こんな漫画を見つけました。

 

アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 第1巻(荒井ママレ著 医療監修:富野浩充 徳間書店)

comic.pixiv.net

 

薬剤師といえば薬局やドラッグストア勤務の人を思い浮かべる方はお多いと思いますが、私たち医者にとって密に関わるのは病院薬剤師と呼ばれる職種です。

 

処方薬の提案や服薬指導などその業務内容は多岐に渡りますが、なかでも疑義照会(処方内容に疑問が生じたときに、処方した医師に問い合わせること)は特に重要です。全国で1日におよそ220万枚の処方箋が処理されるそうですが、そのうち6万枚に疑義がかけられ、うち70%が変更されるそうです(本漫画より引用)。医者は処方しておしまいですが、病院薬剤師さんは最後の砦として患者さんを守っています。

私も実際ケアレスミスが多く、何度も電話がかかってきます。病棟薬剤師さんに迷惑をかけてしまって申し訳なく思っています。。

 

またバイタルサインや検査データの確認を行い、治療介入を行うことも大事な業務内容です。抗がん剤治療を受ける患者さんは様々な副作用を合併しますが、たとえば「先生、この方は吐き気が強く出てるようなので、●●を追加してください」のように(はっきりとした口調で)アドバイスしてくださります。なので、ついつい甘えてしまいます。

 

本漫画に登場する産婦人科医は「薬剤師なのに勝手に患者に触るんじゃない!」とおっしゃいます。

ですが、薬剤師さんは医者と患者さんの橋渡しを行う、必要不可欠な存在です。

病院関係者でない方が本漫画を読んだときに、「結構治療介入してくるんだなあ」と思われるかもしれませんが、決して誇張ではありません。

病院関係者のみならず医療に関わらない方にもオススメの一冊です。

 

個人的にはヒロインの葵みどりさんが好みです。次巻が楽しみです。

書評:『新装版 役人道入門 組織人のためのメソッド』

今回はこの1冊を紹介します。

 

新装版 役人道入門 組織人のためのメソッド(久保田勇夫著 中公新書ラクレ

http://www.chuko.co.jp/laclef/2018/11/150637.html

 

これは財務(大蔵)官僚として34年間役人道を邁進してきた久保田勇夫さんによる、仕事のノウハウが詰まった渾身の1冊です。は章の書き方・難敵との交渉術・上司との接し方・人事の心得などが記されています。

 

その中でも印象に残ったのは「心身の健康維持」でした。働き方改革が叫ばれる昨今ですが、長時間労働が常態化しているうえにその仕事内容が重大なものであり、やはり心身・精神ともに大きな負荷がかかるそうです。

心身が健全でないと健全な判断ができないと説く著者。健康を維持するためには定期的な運動・13食の食事・多くの趣味を持つことなどが必要とのこと。

特に趣味に関しては、自らバイオリンを演奏する人や俳句の会を主宰する人、蝶の収集の大家などなど。財務官僚もマルチな才能をお持ちの人が多いみたいです。「やる気さえあれば趣味を増やすことが出来る」と著者は説きます。

 

また、官僚の中にも無尽蔵に働く人がいるそうで、「長時間働くことの美徳」を押し付けて来るそう。そういう上司がいることは頭に置いておく必要があるが、上司に無理に合わせる必要はない。結局のところ自分の健康は自分で守ろう!と締めくくっていました。

 

 

そういえばこないだ興味深い記事を目にしました。

最近、なぜか長野の「おっさんランナー」が速すぎる(文春オンライン)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181126-00009814-bunshun-spo&p=1

 

何人かの長野県のランナーが紹介されていますが、最後に紹介されている利根川裕雄さんは今年で47歳。41歳以上の日本記録保持者(141534)でありますが、今年の11月に145665と、日本歴代最年長での14分台をマーク。その秘訣は”自分の体調と相談しながら自分の頭でメニューを組み立てること””自分に限界を設定しないこと”だそうです。1日中練習に取り組めるわけではないですが、年齢を重ねても工夫次第で記録は伸びると利根川さんはおっしゃいます。

 

昔と比べると体力の低下を如実に感じる昨今ですが、自分次第でなんとでもなる一方で自分の頭で考えないと心身ともに崩れる可能性があることを今回学びました。

医療とは分野が違いますが、日常生活に活かせる部分も大きいと思い、今回は上記紹介させていただきました。